2008年02月14日

福岡市こども病院の人工島移転について

産婦人科開業医の立場から、こども病院人工島移転についての意見を述べさせていただきます。
 
 こども病院は病気を患った子供達のための病院です。にもかかわらず、子供の都合ではなく一部の大人の都合でその移転場所が人工島に決まろうとしています。人工島移転の問題を考える時、こども病院の医師団・周産期医療に携わる産科開業医など、母児の生命を守る立場にある医師側からの意見が余りにも少ない印象を受けます。病気で苦しむ子供や親御さんにとって、24時間体制で治療に当たる医師団や産科開業医にとって、こども病院の人工島移転は現在地に比べ不利益な面が多過ぎます。人工島移転の一番の問題点は交通の便が悪すぎる事、巨額の費用がかかることです。さらに、現在のこども病院の医療レベルを維持し、新たに周産期医療を目玉にするのであれば、医療スタッフは新病院の近くに移り住むための引越しを余儀なくされます。何故ならば、大人の病気と違って周産期医療は予期せぬ非常事態が多く、緊急を要する病気がほとんどだからです。奈良県のたらい回し事件の様に、妊娠中・分娩中の予測不可能な緊急事態に対する対応は、治療開始までの時間が生死の決め手となります。例えば、妊娠中の胎盤早期剥離や分娩時の胎児仮死の治療が遅れた場合、赤ちゃんの命は助かっても脳に障害を遺す危険性が高いからです。これらは稀な病気ではなく、いつでも起こり得る日常茶飯事の病気なのです。福岡市でも産科医が減りお産難民が予想される今、周産期医療の拠点は交通便の悪い人工島ではなく、誰もが短時間に集合し易い市の中心部にあるのが理想です。病気で苦しむ子供、こどもの回復を必死に願う親御さんの気持ち、そして将来、産科医が極端に少なくなった時のことを考えれば、こども病院は市の中央にあるのがベストと考えます。

福岡市における産科医不足の問題点
 分娩施設を備えた立派なこども病院が出来たとしても、そこで働く産科専門医をどの様にして確保するのか、産科医不足は新病院の建築以上に重大な社会的問題です。ガンや不妊症を専門とする婦人科医は育っても、お産を専門とする産科医の確保は難しいと思われるからです。現在、福岡市の出生数約11,000人の中、6〜7割(約7000人)の赤ちゃんが開業医で生まれています。しかし、5年〜10年後には分娩可能な産科開業医は現在の半分以下、つまり約3000人がお産難民になる可能性があります。すでに福岡市でも院内助産院・助産師外来が増えつつあるのは産科医不足の影響です。産科医不足は今後急速に進み、分娩時の医療事故・障害児の増加など、間違いなく医療レベルの低下へと発展します。福岡市はこども病院の移転を考える前に市の周産期医療の実態(発達障害児の著しい増加)を詳しく調査し、産科医不足対策を早急に立ち上げるべきです。福岡市の調べでは、発達障害児の年次推移は、H1年33人、H5年50人、H10年182人、H15年218人、H18年248人、この18年間で発達障害児は信じられない速さ(約7〜8倍)で増加しています。H18年では、発達障害児とその他の障害児を合わせると年間600〜700人、このままでは2〜3年後には年間800人の障害児、つまり福岡市で生まれる子供の12〜13人にひとりが障害児と診断されることになります。
 産科医不足は子供病院の産科医の確保を難しくするだけでなく、発達障害児の発生をさらに増やすのが問題です。市は産科医不足を解消し発達障害児の増加に歯止めをかけるにはどうすればよいのか、直ちに調査研究班を立ち上げ発達障害児を未然に防止しなければなりません。産科専門医は大学を卒業してから最低でも10年の臨床研修が必要です。市は産科医を増やすための予算を確保し、そのために無駄な出費を抑えなければなりません。福岡市はこども病院の人工島移転に積極的ですが、市民にとって最も大事なことは周産期医療の根本的な建て直し、産科専門医の育成に努めることが最優先事項と思います。子供病院の移転は、産科医不足・発達障害児の増加に歯止めがかかってからでも遅くないと思います。こども病院の新築移転問題はいったん白紙に戻し、福岡市は日本一、安全・安心・快適なお産が出来る都市づくりを目指して、より健康なこどもが育っていく環境をつくるべきと考えます。
 
平成19年10月11日
久保田産婦人科麻酔科医院
久保田史郎
福岡市中央区平尾2−12−18
posted by タマちゃん at 11:34| Comment(6) | TrackBack(0) | 産科医の意見書

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