2008年03月06日

新生児管理の変遷

1993年、厚労省がWHO/UNICEFの「母乳育児を成功させるための10カ条」を後援したのを契機に、出生直後の新生児管理は様変わりした。我国の歴史的な「産湯」の習慣は無くなり、「生後30分以内のカンガルーケア」が当たり前となった。栄養面においても、乳母・もらい乳の慣習も消え、母乳以外の糖水・人工乳を与えない(完全)母乳栄養法が赤ちゃんに優しいと考えられる様になった。ところが、出生直後のカンガルーケアと母乳が満足に出ない生後0〜3日間の完全母乳栄養法は、低体温・低血糖・重症黄疸などの合併症を増やし児に不利益である事が分かってきた。

厚労省は母乳哺育の普及を推進しているが、出生直後の新生児にとって大事なことは母乳か人工乳かではなく、低体温やカロリー不足はないか、先ず赤ちゃんの健康状態に目を向けるべきである。医学の進歩によって低出生体重児が元気に育つ様になった理由は、出生直後の低体温と低栄養の防止に万全の注意が払われたからである。しかし、厚労省の新しい授乳・離乳の支援ガイド(2007年)には、正常成熟児が新生児早期に低体温・低血糖・重症黄疸に陥らない様にするための医学的な配慮(予防医学)が見られない。

厚労省に伝えたいことは、母乳哺育の長所を活かし、短所を科学(予防医学)で補う日本独自の新しい新生児管理法を世界に先駆け全国に早急に発信して頂く事である。

久保田産婦人科麻酔科医院 久保田史郎
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カンガルーケアの問題点

生後30分以内のカンガルーケアの問題点

出生直後の裸の赤ちゃんにとって快適な環境温度(中性温度)は32~34℃です。ところが、空調設備の整った日本の分娩室は大人に快適な環境温度(24~26℃)に設定されています。冷房設備がない高温多湿な国でカンガルーケアをしても児は低体温になる心配はありません。しかし、日本の分娩室(24~26℃)で生後30分以内にカンガルーケアをすると体温下降が進み正常体温(恒温状態)への回復が遅れ適応過程に支障を招きます。

出生直後の低温環境・低体温が児に不利益な点:
1.分娩を境に急激な環境温度の低下に遭遇すると、早期新生児は『低体温⇔低血糖』の悪循環を形成します。早期新生児の低血糖は脳の発育に不利益です。
2.低温環境下では放熱抑制を目的とした体温調節機構が働き、全身の末梢血管は収縮します。その結果、消化管の血流量が減少し初期嘔吐・胎便排出遅延の原因になります。初期嘔吐は哺乳障害、胎便排出遅延は重症黄疸の原因となり児にとって不利益です。
3.生命維持装置を司る自律神経は恒温状態でその機能を正常に作動しますが、低温・高温環境下ではまともに働きません。自律神経機能は生命維持装置(呼吸・循環・ホルモン調節など)の安全性よりも体温を恒常に保つための体温調節の方を優先的に調整します。

恒温動物・哺乳動物である赤ちゃんにとって大事なことは、出生直後の低体温をどの様にして防ぎ児を恒温状態にいかに早く安定させるか、初期嘔吐(哺乳障害)をどの様にして防ぎ、母乳が出ない生後数日間をどのようにして栄養を補うかが新生児管理で最も重要な点です。
posted by タマちゃん at 19:13| Comment(1) | TrackBack(0) | 産科医の意見書